猫らしさ ~ 猫には猫の役割 ~

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猫らしさ ~ 猫には猫の役割 ~

日本各地には、有名な犬の銅像がいくつも設置されていますが、それに比べ猫の銅像はあまりみかけません。

犬には犬の、猫には猫の役割というものがありますが、犬の役割の方が目立つので、犬ばかりが活躍しているように見えるのかもしれません。

今回は、あるオスの「三毛猫」が、「猫らしく」役割を果たし、立派に活躍したお話を紹介したいと思います。

「三毛猫」といえば、そのほとんどがメスであることがよく知られていますが、オスの「三毛猫」は、極めて珍しい猫(誕生するのは3万分の1の確率)なのです。

1956年11月頃、当時の日本において猫は「安全な航海の縁起物」とされており、オスの「三毛猫」はより縁起がいいとして、生後2ケ月で観測船「宗谷(そうや)」に乗船しました。

この観測船には、あの有名な「タロとジロ」も乗船していて、そのほか、カナリア2羽も乗船していました(現在は南極への動物の持ち込みは禁止されています)。

ちなみに、カナリアの役割は「炭鉱のカナリア」、すなわち、人間が感知できないような異臭や空気の異常にも素早く反応してさえずりをやめる特性があるので、気密性の高い昭和基地の空気をチェックすることでした。

子猫の名前は、第1次南極観測隊隊長である地球物理学者の永田武(初代国立極地研究所長)にちなんで、隊員が「たけし」と名付けたそうです。

南極観測隊は全員で53人いましたが、「夏隊」と「越冬隊」に分かれていて越冬するのは11人だけ、「たけし」は「越冬隊」の仲間として残りました。

しかし、猫は、樺太犬のようにそりを引いて働くわけでも、研究の対象でもなかったので、「たけし」の記録はわずかしかありません。

「たけし」は、ただ基地にいるだけでも、殺伐とした南極で癒しを与え、笑みをもたらしてくれました。

そして、南極で生まれた子犬たちとじゃれあい遊んだり、子犬たちを引き連れて歩く「大将」でもありました。

また、「たけし」は卵が大好物で、カナリアの卵を食べて隊長に叱られたという、なんとも「猫らしい」エピソードも残されています。

こうして、「たけし」が「越冬隊」の中で果たした役割はとても大きく、隊の仲間としても欠かせない存在になっていました。

1958年2月11日、第2次南極観測隊員を乗せた観測船「宗谷」が厚い氷に阻まれて接岸できないことが判明し、11人は4班に分かれて軽飛行機で昭和基地を脱出することになりました。

このとき、人間以外で軽飛行機に搭乗できたのは、子犬6匹、カナリア2羽と、猫の「たけし」だけ、「タロとジロ」を含む樺太犬15匹は『南極物語』の映画にあるように、その後、悲しい運命をたどるのでした。

「たけし」は無事に南極から帰国した後は、いつも一緒に寝ていた隊員に引き取られましたが、わずか1週間ほどで姿を消してしまい、カナリアたちもその後の余生は知られていません。

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寂しいようですが、役割を果たした後に、どこかに姿を隠してしまうという結末もまた、「猫らしさ」なのかもしれません。




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